儲け・豊かさにつながるゼロベース思考の問題解決アプローチ(山の絵アプローチ)

今までのIEでは、与えられた問題にIE手法を適用するだけのことがあった気がします。しかし、扱う問題が企業の儲けや豊かさにつながらないのでは効果が得られません。また、現状のムダを見つけ改善するなかで、改善案が後戻りしたり、現状をゼロベースで見直すことにならなかったりすることも多いような気がします。
そのような中で、問題発見から改善案までの実現を5つのステップで実行する図1-1の儲け・豊かさにつながるゼロベース思考のアプローチ(山の絵アプローチ)を提案しています。山の絵にたとえることで、問題解決が昇るべき山を創り出し、山頂を明らかにし、それに向かって進むIEのアプローチがわかりやすくなります。以下が簡単な説明です。
①儲け・豊かさにつながる問題の選定
問題は、「現状」と「進むべきあるべき姿」との違いでとらえられます。現場を取り巻く環境や実態を儲けと豊かさの側面から分析し、できるだけ高い理想を目指し問題を設定します。良い問題のとらえ方は、解の可能性を多く含み、企業に儲けや豊かさをみたらします。
②ふもと(現状)の具体的・定量的な分析
①で問題が明らかになると、現状の仕事やシステムには、その問題を実現するための悪さが必ずあります。悪さがなければ問題は生じません。その悪さを徹底的に分析をします。その際に参考になるのは、以下に示す「価値作業分析」です。悪さが明確になったら、悪さが生じる「原因」を追究します。原因を深堀し把握すると山頂が見えてきます。

③山頂を客観的・定量的に描く
②で原因が明らかになると、その原因を解決すべき新たな仕事やシステムの姿が見えてきます。それが山頂になります。このとき山頂はゼロベース思考で考えます。例えば、図1-2にあるように、設備にチョコ停が発見されたとします。その原因を深堀していくとオペレーターの教育がされていないことに気づきます。この真の原因がわかると新たな教育システムを作るという山頂ができあがります。
④山頂に登るためのストーリーの作成
山頂が明らかになると、それを実現するためのストーリーが作成しやすくなります。このように山頂から、そのストーリーを考えることをバックキャスト思考と言います。ストーリーは、1つを考えるのではなく、いくつかの「シナリオ」を用意するとよいです。
⑤山登りの実行
IEの難しさは、改善案の実行にもあります。すなわち、改善とは現状を壊し変えることで、そこでは変化の抵抗が生じます。そのためには、人や組織をコントロールするマネジメント力が必要になります。マネジメント方法については、ここでは省略します。また、「チーム」を作ることも大切です。チームでは、プロジェクトマネジメントを活かしシナジー効果を生み出すように進めることが大切です。
価値作業分析

仕事の悪さを見つけるための方法は、主に2つあります。1つは、仕事のムリ・ムダ・ムラを発見し、それらを排除や簡素化する方法です。他の1つは、仕事のあるべき姿を明らかにして、それに向かった改善することです。(図1-3参照)両方のアプローチができることが大切ですが、弊社ではデザインアプローチの分析方法の1つとして価値作業分析を活用しています。この理論は、慶應義塾大学名誉教授中村善太郎氏の「もの・こと分析」を基礎にしています。
以下に簡単に価値作業分析について紹介します。価値作業分析では、仕事の始めの状態にある「材料」と仕事の終わりの状態にある「製品」の違いに注目します。仕事のなかで、この違いを実現する変化を価値変化、それ以外はいくら省いても問題ないと変化で不要変化と呼ぶことにします。
図1-4に示すような鉛筆を削る作業では、違いは「丸い鉛筆から余分な削りカスを除去する」になります。したがって、現状の作業では、価値変化は「削る」だけになります。削る以外は、すべて不要作業になり、生産性を向上させるためには、これらの変化がすべて悪さになります。
